愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「少しはマシになりました?」
「ああ」
目を緩めて私を見るから何となく照れる。でも嬉しい。
思わず目を反らすと、私もコウさんに並ぶようにして塀に持たれかけた。
「大変ですね。いつもこんな感じでお仕事してるんですか?」
「もう慣れたけどな」
「私には出来そうにないです。すぐにリタイアしちゃいそう」
夏は暑いし、冬は寒い。
いつ現れるか分からない犯人を待つのはきっと物凄く根気がいるよね?相当の忍耐が必要だと思う。
「あ、でも婦人警官の服装はちょっと魅力的かも。少し憧れちゃいます」
そう言うと一瞬ポカンとした顔をしたものの「お前らしいな」と、コウさんは笑った。
その表情を観ていたら、つられるように私も頬の筋肉が揺れる。
「もし、もしもですよ。今から婦人警官になるために勉強したいって言ったらコウさん応援してくれます?」
「は?」
「嘘です。冗談ですよ。そんなことあるわけないじゃないですか。一ミリも思ってません。正直今他にやりたいことがあるので。
ふふ…ちょっと焦りました?」
「アホか」
悪戯ごころでニヤリ笑うと、彼の呆れた声が飛んでくる。
「お前にはコスプレぐらいがちょうどいいだろ」
また…、からかわれた。
そんな風に言われたら私も負けてられない。
「コスプレ、してほしいですか?」
ふふん、挑発的に攻撃するとコウさんの瞳が変わる。どうせまたからかうんでしょ?と思っていた私は次のコウさんの意外な言葉に「えっ…」と硬直する。