愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「何ですか?その余裕の表情は…」
「いや…、そう言いつつどうせ当日になったら着るんだろうなと思って。まぁ、その心意気に免じて楽しみにしててやるよ」
完全に見透かされてる…
けど、コウさんがあまりに無邪気に口元を緩めるから、まぁいっか。なんて思えてしまう。
だって、大魔王様のこんな反応が見られるのはやっぱり貴重だもん。
「そう言えばもう機嫌は直ったんですね?今は怒ってないの?」
私は覗き込むようにしてコウさんを見た。
実はさっきからドキドキしてた。
さっきのコウさんがあまりに変だったから。
だけど今はおかしな態度や発言も見られない。いつものコウさんだと思う。
「もう大丈夫?」
するとコウさんの顔が苦笑いに変わる。
私の問いかけには一切答えることもなく、ただ気まずそうに視線を反らすだけだった。
「あんま俺を苛めんなよ」
「いや、そんなつもりは……。ただ、私もさっきは変な態度をとっちゃったので申し訳なかったかと…」
よく分からないけど、気まずいのは嫌だ。
私はちょんちょんとコウさんの袖を掴み、ここは潮らしく謝ったほうがいいのかと試みる。
「さっきはごめんな………くしゅんっ」
だけど、それは最後まで言えなかった。
突然のくしゃみに邪魔され、私は瞬時にブルッと体を震わせる。