愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「俺はいつだって梨央の味方だから。梨央が望むことなら何でもしてあげる」
これはまずい。
涙腺が緩みそう。
心身ともに弱ってる私には尚更のこと。慎ちゃんの優しさに溢れた言葉が体に染み渡っていく。
それは例えるなら枯葉にお水を与えられてるような状態で、カラカラになった喉まで潤してくれそうな勢いだ。
「梨央」
名前を呼ばれ、思わず目の前の瞳と見つめ合ってしまった。
ゾクッとするほどの魅力的な瞳。
思わず視線が止まる。
慎ましやかな色気が私を追い詰めるようで、見つめ合いながら動けなくなってしまう。
「もう寝たほうがいいよ」
だけどそんな雰囲気を壊したのは慎ちゃんだった。
にこやかに笑うと、「きっともうすぐ彼も来るよね?」なんて安心させるように目を細め、私から離れてく。
「それまで側にいてあげる」
「…あ、うん……」
心の中は複雑だった。
慎ちゃんの顔が一瞬寂しそうに映ったのは気のせいだよね?
腑に落ちない感情に戸惑いながら、この時、私はコウさんからの着信に気づけないでいた。