ずっとキミが好きでした。
秋が深まり、日が沈むのも早くなった。
まだ6時を少し過ぎたばかりなのに、辺りはすっかり暗くなり、街の灯りが煌々と点いていて目にまぶしかった。
「ねぇ、なんでここで降りたの?」
「いいから黙って付いて来い」
「いや、良くないでしょ!?」と怒りたくなるのを必死に抑え、言われた通り黙って明日音の後をついて行った。
街並みは、私たちが住んでいるど田舎とは違って少し開けていて、街灯もあり、明るい。
駅前周辺のスーパーやコンビニには若い主婦や学生の姿があった。
ショッピングストリートを通り過ぎ、ひたすら直進して行くと、目の前に公園が現れた。
滑り台にブランコ、アスレチック、シーソー、鉄棒など実に様々な遊具が設置されていて、その中央には噴水があった。
昔よく遊んだ近所の公園より立派で、遊びごたえがありそうな感じがした。
自然と童心に返り、ブランコに乗りたくなった私は、疲れを忘れてブランコに駆け寄り、勢いよく立ち乗りした。
膝を曲げ、反動を付けて高く上がった。
無邪気だったあの頃みたいにブランコから飛び降りるなど無謀なことはしなかった。
私がブランコに夢中になっている間に明日音もブランコに座った。
私が「漕いでみなよ~」と促したが、なんだか上の空って感じで遠くを見つめていた。
懐かしい遊具にたっぷり魅了され、今度こそ疲労困憊になってしまった私は、ようやく落ち着き、明日音に視線をやった。
「ねぇ、どうしてここに来たの?」
さっきから考え込んでいるみたいだから何か考えがあったのだろう。
私に童心を蘇らせるためにここに来たのではないことは明白だった。
真の理由を聞きたかった。
明日音は立ち上がり、私の真ん前に立った。
そしてそのまま座り、私の顔を覗き込む。
自身のない目つき。
こんなに険しい顔して、一体明日音は私に何を言うつもりなのだろう?
私にはさっぱり検討がつかなかった。
「翼」
「何?じれったいなぁ。もったいぶらないでさっさと言っちゃいな!」
互いの視線が交わった。
明日音は覚悟を決めたのか、口を切った。
「翼はさ、これからどうする?」
「これからって?」
「これからはこれからだ。たとえば…進学とか、就職とか」
「それならもう決まってるよ。私は大学行くんだ。耀の話聞いたら行きたくなって。私…もっと色んな世界を見たい。自分の知らないことを知りたい。だから、大学は絶対行く」
「ならさ…」
一瞬時が止まった。
男らしくない明日音に少々呆れていると、明日音が私の瞳を凝視して来た。
じっと見つめられて胸がドキドキした。
心臓のポンプ作用がいつになく活発に稼働しておかしくなったのかと心配した。
「オレについて来てくれない?」
「えっ?」
「オレ、大学行ったらバンド活動しながらプロも目指して行こうと思ってる。あいにく、みくとは学力に雲泥の差があるし、作りたい音楽も違うから一緒にはなれない。だから…オレは翼だけが頼りなんだ。…ってか、翼さえ居てくれれば別に他はどうでも良いんだけど…。んで、どう?翼、オレについてきてくれる?」
そんなの、わざわざ聞かなくても良いのに。
私は言われる前から決めている。
やるべきことは分かってる。
私は明日音にデコピンをかました。
明日音は突然のことに驚いて尻餅をついた。
肝心な時にオレ様キャラを崩してしまう残念な彼に、私はきちんと返事をした。
「ついてくよ、どこまでもいつまでも。歌詞の通り、二人で一羽の鳥になって羽ばたくんだから、一緒じゃなきゃダメでしょう?」
私のその言葉を聞いて明日音は泣き出した。
感動したのか、ほっとしたのか、おそらく後者だろうけど、とにかく彼は素直に泣いた。
いつの日か、私のために泣いてくれたことを思い出して、私も目頭が熱くなった。
時に垣間見えるこのギャップもまた、たまらない。
取説に追加事項として書き加えなくては…。
なんて考えていると、明日音がYシャツの袖でゴシゴシと涙を拭って顔を上げ、再び私に視線を投げかけた。
「ってか、これ言うの、あっちの銀杏並木の予定だったんだけど」
「あっそ。ごめんね~」
「完全に翼のせいだ。高校生にもなって、なんでブランコに乗らなきゃならないんだよ!ホント、バカだな!」
「バカはどっちよ!明日音、この前のテスト、赤点3つもあったクセに~」
「しっ!静かにしろ!そんなこと、ここで言うな!」
私たちは流れる時間も忘れてしばらく押し問答を繰り返した。
ライトアップされた銀杏並木を目に焼き付け、幻想的な世界に心酔した。
明日音と二人で見上げた銀杏並木が桜並木になる頃には、また二人で見たいなぁと心の中で思って、胸のポケットにしまった。
大事な冬を越え、春になったら…
キミと飛びたい。
まだ見ぬ世界へ。
私はアシタノツバサに願いを託した。
まだ6時を少し過ぎたばかりなのに、辺りはすっかり暗くなり、街の灯りが煌々と点いていて目にまぶしかった。
「ねぇ、なんでここで降りたの?」
「いいから黙って付いて来い」
「いや、良くないでしょ!?」と怒りたくなるのを必死に抑え、言われた通り黙って明日音の後をついて行った。
街並みは、私たちが住んでいるど田舎とは違って少し開けていて、街灯もあり、明るい。
駅前周辺のスーパーやコンビニには若い主婦や学生の姿があった。
ショッピングストリートを通り過ぎ、ひたすら直進して行くと、目の前に公園が現れた。
滑り台にブランコ、アスレチック、シーソー、鉄棒など実に様々な遊具が設置されていて、その中央には噴水があった。
昔よく遊んだ近所の公園より立派で、遊びごたえがありそうな感じがした。
自然と童心に返り、ブランコに乗りたくなった私は、疲れを忘れてブランコに駆け寄り、勢いよく立ち乗りした。
膝を曲げ、反動を付けて高く上がった。
無邪気だったあの頃みたいにブランコから飛び降りるなど無謀なことはしなかった。
私がブランコに夢中になっている間に明日音もブランコに座った。
私が「漕いでみなよ~」と促したが、なんだか上の空って感じで遠くを見つめていた。
懐かしい遊具にたっぷり魅了され、今度こそ疲労困憊になってしまった私は、ようやく落ち着き、明日音に視線をやった。
「ねぇ、どうしてここに来たの?」
さっきから考え込んでいるみたいだから何か考えがあったのだろう。
私に童心を蘇らせるためにここに来たのではないことは明白だった。
真の理由を聞きたかった。
明日音は立ち上がり、私の真ん前に立った。
そしてそのまま座り、私の顔を覗き込む。
自身のない目つき。
こんなに険しい顔して、一体明日音は私に何を言うつもりなのだろう?
私にはさっぱり検討がつかなかった。
「翼」
「何?じれったいなぁ。もったいぶらないでさっさと言っちゃいな!」
互いの視線が交わった。
明日音は覚悟を決めたのか、口を切った。
「翼はさ、これからどうする?」
「これからって?」
「これからはこれからだ。たとえば…進学とか、就職とか」
「それならもう決まってるよ。私は大学行くんだ。耀の話聞いたら行きたくなって。私…もっと色んな世界を見たい。自分の知らないことを知りたい。だから、大学は絶対行く」
「ならさ…」
一瞬時が止まった。
男らしくない明日音に少々呆れていると、明日音が私の瞳を凝視して来た。
じっと見つめられて胸がドキドキした。
心臓のポンプ作用がいつになく活発に稼働しておかしくなったのかと心配した。
「オレについて来てくれない?」
「えっ?」
「オレ、大学行ったらバンド活動しながらプロも目指して行こうと思ってる。あいにく、みくとは学力に雲泥の差があるし、作りたい音楽も違うから一緒にはなれない。だから…オレは翼だけが頼りなんだ。…ってか、翼さえ居てくれれば別に他はどうでも良いんだけど…。んで、どう?翼、オレについてきてくれる?」
そんなの、わざわざ聞かなくても良いのに。
私は言われる前から決めている。
やるべきことは分かってる。
私は明日音にデコピンをかました。
明日音は突然のことに驚いて尻餅をついた。
肝心な時にオレ様キャラを崩してしまう残念な彼に、私はきちんと返事をした。
「ついてくよ、どこまでもいつまでも。歌詞の通り、二人で一羽の鳥になって羽ばたくんだから、一緒じゃなきゃダメでしょう?」
私のその言葉を聞いて明日音は泣き出した。
感動したのか、ほっとしたのか、おそらく後者だろうけど、とにかく彼は素直に泣いた。
いつの日か、私のために泣いてくれたことを思い出して、私も目頭が熱くなった。
時に垣間見えるこのギャップもまた、たまらない。
取説に追加事項として書き加えなくては…。
なんて考えていると、明日音がYシャツの袖でゴシゴシと涙を拭って顔を上げ、再び私に視線を投げかけた。
「ってか、これ言うの、あっちの銀杏並木の予定だったんだけど」
「あっそ。ごめんね~」
「完全に翼のせいだ。高校生にもなって、なんでブランコに乗らなきゃならないんだよ!ホント、バカだな!」
「バカはどっちよ!明日音、この前のテスト、赤点3つもあったクセに~」
「しっ!静かにしろ!そんなこと、ここで言うな!」
私たちは流れる時間も忘れてしばらく押し問答を繰り返した。
ライトアップされた銀杏並木を目に焼き付け、幻想的な世界に心酔した。
明日音と二人で見上げた銀杏並木が桜並木になる頃には、また二人で見たいなぁと心の中で思って、胸のポケットにしまった。
大事な冬を越え、春になったら…
キミと飛びたい。
まだ見ぬ世界へ。
私はアシタノツバサに願いを託した。