ずっとキミが好きでした。
あっすーとおれはクラスが違う。
おれは1組であっすーは8組。
10クラスある中の1と8ではかなり距離があるが、目的があればあっすーは何が何でもやってくる。
「今日も来るって言ってたけど、いつも何話してんの?」
今まで一度も来なかったあっすーが毎日通って来ることに、みっくんは怪訝そうな表情を浮かべて尋ねてきた。
誰にも喋るなと言われていたが、みっくんは信頼できるから、おれはことのいきさつを話した。
おおよそ感づいていたみっくんは驚くこともなく、ほほうと感心しながら弟のラブコメの実写版告白計画について聞いていた。
そうこうしているうちに、定刻通りあっすーは登場した。
「ばさお!早く来い!」
「はいはい、今行く」
本当はもっとゆったりと昼食を楽しみたかったが、邪魔が入ったため、弁当を半分くらい残して袋に戻した。
明日からは簡単に食べられるようにおにぎりとか総菜パンにしようと思えたのは、日々の女子力アップ活動の成果かもしれない。
咄嗟に料理が頭に浮かんで来たことに一人酔いしれていると、あっすーがツカツカと不法侵入して来た。
「早くしろつってんだよ!」
右腕を強引に引っ張られ、半ば引きずられるようにしておれは軽音部の部室にやって来た。
あの日以来一度も行っていなかったが、だいぶ雰囲気が変わった気がした。
おれの居場所はここには無いと明確になって、なんだか居心地が悪かった。
「でさ、早速なんだけど、この曲をプレゼントしようと思うんだ。アカペラだからちいっと大変だけど」
あっすーから手渡されたのは、昔から作詞に使っている自由帳だった。
真っ白の線もマスも無いそれに思いつくままに書くのがあっすーのスタイルだ。
懐かしい自由帳だが、おれが以前見たものとは違っていた。
買い換えたのか、表紙が照明の光で光っていた。
おれの知らぬ間に、おれの知らないあっすーの時間が流れている…。
その事実がおれには痛かった。
じわじわと胸の奥が痛んできて、真っ直ぐにあっすーの顔を見られなかった。
「なかなか良い歌詞だろ?この歌詞に合うシチュエーションってどんな感じかな?やっぱ真面目に歌って、歌い終わったら告れば良いかな?」
全ておれに同意を求めているが、おれの同意があろうがなかろうが、あっすーは実行する。
自分が思ったことは実行しないと納得しない質なのだ。
だからおれに出来ることは、あっすーのアイデアを傷つけず、やんわりと手を加えることだけだ。
その役割さえこなせれば、おれはもう用無し。
窮屈なこの場所から離れられるのだ。
「だいたいそんな感じで良いと思う。
おれがなっつんと一緒にいて途中でいなくなるから、その時颯爽と現れて二人きりになれそうな場所に連れて行く。場所は下調べした方が良い。そしたらさっきあっすーが言ったようにやる。んで、返事を待つ」
「おう、完璧じゃん!」
そう…ーー完璧。
完璧なシチュエーションだ。
これはおれが結末まで分かりきっている、完全無欠の計画なのだ。
あっすーの願い、叶えるよ。
だってそれが、おれに出来る最大限のことだから。
占いの忠告に応じておれは動いている。
綻びがあっても、おれのせいにはならない。
おれは占いに甘えているみたいだ。
自分の運命を委ねて楽しんでいる。
「おい、ばさお。場所の下調べ、明日放課後行くからな。ちゃんとオレに提示出来るようにしとけよ」
「分かった。今日調べておく」
「ホント、ありがとな。こういう時こそ、幼なじみだな!」
あっすー、
おれは…
キミのためなら何でもしてしまう。
嫌いになれないのは、どうしてかな?
おれはずっとキミが…ーーー。
「じゃ、よろしく」
あっすーはおれを取り残して去っていく。
分かってるけれど、やっぱり振り返ってくれない。
おれはその背中をじっと見つめていた。
おれは1組であっすーは8組。
10クラスある中の1と8ではかなり距離があるが、目的があればあっすーは何が何でもやってくる。
「今日も来るって言ってたけど、いつも何話してんの?」
今まで一度も来なかったあっすーが毎日通って来ることに、みっくんは怪訝そうな表情を浮かべて尋ねてきた。
誰にも喋るなと言われていたが、みっくんは信頼できるから、おれはことのいきさつを話した。
おおよそ感づいていたみっくんは驚くこともなく、ほほうと感心しながら弟のラブコメの実写版告白計画について聞いていた。
そうこうしているうちに、定刻通りあっすーは登場した。
「ばさお!早く来い!」
「はいはい、今行く」
本当はもっとゆったりと昼食を楽しみたかったが、邪魔が入ったため、弁当を半分くらい残して袋に戻した。
明日からは簡単に食べられるようにおにぎりとか総菜パンにしようと思えたのは、日々の女子力アップ活動の成果かもしれない。
咄嗟に料理が頭に浮かんで来たことに一人酔いしれていると、あっすーがツカツカと不法侵入して来た。
「早くしろつってんだよ!」
右腕を強引に引っ張られ、半ば引きずられるようにしておれは軽音部の部室にやって来た。
あの日以来一度も行っていなかったが、だいぶ雰囲気が変わった気がした。
おれの居場所はここには無いと明確になって、なんだか居心地が悪かった。
「でさ、早速なんだけど、この曲をプレゼントしようと思うんだ。アカペラだからちいっと大変だけど」
あっすーから手渡されたのは、昔から作詞に使っている自由帳だった。
真っ白の線もマスも無いそれに思いつくままに書くのがあっすーのスタイルだ。
懐かしい自由帳だが、おれが以前見たものとは違っていた。
買い換えたのか、表紙が照明の光で光っていた。
おれの知らぬ間に、おれの知らないあっすーの時間が流れている…。
その事実がおれには痛かった。
じわじわと胸の奥が痛んできて、真っ直ぐにあっすーの顔を見られなかった。
「なかなか良い歌詞だろ?この歌詞に合うシチュエーションってどんな感じかな?やっぱ真面目に歌って、歌い終わったら告れば良いかな?」
全ておれに同意を求めているが、おれの同意があろうがなかろうが、あっすーは実行する。
自分が思ったことは実行しないと納得しない質なのだ。
だからおれに出来ることは、あっすーのアイデアを傷つけず、やんわりと手を加えることだけだ。
その役割さえこなせれば、おれはもう用無し。
窮屈なこの場所から離れられるのだ。
「だいたいそんな感じで良いと思う。
おれがなっつんと一緒にいて途中でいなくなるから、その時颯爽と現れて二人きりになれそうな場所に連れて行く。場所は下調べした方が良い。そしたらさっきあっすーが言ったようにやる。んで、返事を待つ」
「おう、完璧じゃん!」
そう…ーー完璧。
完璧なシチュエーションだ。
これはおれが結末まで分かりきっている、完全無欠の計画なのだ。
あっすーの願い、叶えるよ。
だってそれが、おれに出来る最大限のことだから。
占いの忠告に応じておれは動いている。
綻びがあっても、おれのせいにはならない。
おれは占いに甘えているみたいだ。
自分の運命を委ねて楽しんでいる。
「おい、ばさお。場所の下調べ、明日放課後行くからな。ちゃんとオレに提示出来るようにしとけよ」
「分かった。今日調べておく」
「ホント、ありがとな。こういう時こそ、幼なじみだな!」
あっすー、
おれは…
キミのためなら何でもしてしまう。
嫌いになれないのは、どうしてかな?
おれはずっとキミが…ーーー。
「じゃ、よろしく」
あっすーはおれを取り残して去っていく。
分かってるけれど、やっぱり振り返ってくれない。
おれはその背中をじっと見つめていた。