ずっとキミが好きでした。
「はあ~…やっと着いた~」





「ばさお、体力ねえな。家庭科クラブでぬくぬくしてるから足腰弱ったんじゃねえの?」







「うるせえ!」







夏祭りが開催される神社の境内までは鳥居をくぐってから百段以上階段を上らなければならない。


あっすーの言うとおり、おれは日常的に運動していないため、階段だけでかなり体力を消耗してしまった。


上りきってすぐに手を膝に当て、はあはあ、ぜえぜえ…と上がった息を整えた。


呼吸も苦しいが、沈黙も同じくらい、いや、それ以上に苦しい。


おれは必死に話題を探してあっすーに話しかけた。





「相変わらずボロい神社だな。…あっ、でも来年から塗装始まるんだっけ」






「知らねえよ、んなの」






せっかく話しかけたのに、ばっさり断ち切られた。


何気なく交わしていた言葉のキャッチボールさえも出来なくなりつつあることに、おれはがっくりと肩を落とした。


しかし、あっすーはそんなことを気にもとめず、自分が一ヶ月後に迫る運命の告白の舞台探しに奔走していた。





体力の無いおれは、太陽を遮るように御神木の根元近くに腰掛けた。


木の葉と木の葉の間から僅かに差し込む光に目を細め、手を伸ばしてみた。




おれはいつ、本当の自分を掴み取れるのかな?


いつ光を浴びてキミに見てもらえるかな?





そんなことをぼんやりと考えていると、遠くから怒鳴り声が聞こえて来た。





「おい、さぼってんなよ!ちゃんと手伝え!」







「分かってる。ちょっと休んでただけ」 







おれは近くて遠いあっすーの元へと駆けた。






幼い頃、キミの背中をおれはずっと追いかけていた。


そして今も…。







でもこれからは…--ない。







きっとこれが最後だ。
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