ずっとキミが好きでした。
おれとあっすーは、絶好の告白ステージを見つけた。


昔遊びに来ていた時にはなかった、ブランコとベンチが一つあるだけの小さな公園だった。


山の一部を切り崩して何か作るらしいと祖母が言っていたが、それがこれだった。





「なんかしょぼい気もするけど、風情があるから良しとするか」






おれには風情ではなく陰気臭さを感じたが、余計なことは言わないでおいた。


おれは特に何をするということもなく、ただ単に、ことの成り行きを見届けただけだった。




こうなるように神様は仕組んでいたのだろうか。




最近は本当におれにとって屈辱的なことばかりが続いている。


おれは深いため息を一つつき、空を見上げた。


太陽が西に傾きはじめ、おれを燃やすように照りつけていた。






「よし、用も済んだし、帰るか」








「あのさ、あっすー」 







踵を返したあっすーにおれは話しかけた。


あっすーが振り返っておれを見る。




昔は何度もこうして名前を呼んだ。


おれが名前を呼べばあっすーが必ずおれを見てくれるから。


ただそれだけの理由で呼んでいた。




本当はあっすーに気づいて欲しかった。


おれがあっすーに抱いている特別な思いに…。







おれは首を横に振った。






「何でもない。テスト勉強大変だし、早く帰ろ」






あっすーの背中を見て歩きたくないからおれは先に長い階段を駆け下りた。


徐々に沈んで行く夕日に、おれは自分の姿を重ねた。


もうじきおれの太陽も見えなくなる。


そして二度とおれにその光りと温もりは与えられない。






運命は決まっている。








階段を一気に駆け下りたら息が切れて胸が苦しくなった。


じっとりと汗をかいた肌に、夏特有の生ぬるい風が触れた。


胸の奥のもやもやとした感情とこの不快感がおれの心を一層重く、陰鬱にした。








「ばさお、帰る時は妙に元気だな~」








…元気なんかじゃない。





のどまででかかった言葉を飲み込むより、祖母特製のさっぱりとした梅ジュースが飲みたかった。
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