ずっとキミが好きでした。
長かったテスト期間が終わった。


勉強が得意なのは、おれじゃなくて耀だ。


国語、数学、英語、社会、理科どれをとっても、耀が高校生だった時よりおれの出来は悪い。





おれのコンプレックスの一部を作り上げた兄は夏休みに帰省するらしい。




そのことが分かったのは、今朝だった。




祖母が思い出したように「耀が帰って来るから、翼も色々準備しておくように」と言った。


色々な準備とは、おれの女子力のことだろう。


祖母も協力してくれているが、どうにもこうにも“おれ”の一人称が直らない。


必ず“おれ”が先行し、訂正する形で“私”が登場する。


直そうと意識すればするほど、“私”が出にくくなっているような気さえし、ここ数日は諦めていた。


しかし、耀が帰って来るとなると、諦めるわけにもいかない。


今度こそは、可愛い妹だと思ってもらいたい。


そのためには日々練習あるのみだ。






「翼ちゃん」






「ああ、なっつん。テストお疲れ」

 




「うん…」







なっつんは気が重いテストが終わったというのに、複雑な表情を浮かべていた。


顔が硬直し、今にも泣き出しそうな彼女に、“私”は勇気を振り絞って尋ねた。


  


「なっつん、どうした?何かあった?」





「あのね、実はね…」
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