ずっとキミが好きでした。
「おはよ、翼」





「おはよう、みっくん」





昇降口で必ずと言っていいほどみっくんとは遭遇する。


時間の流れる速さが、みっくんとはどうやら似ているらしい。


それはそれはとても光栄なことだ。





だってみっくんは…ーーー。





「みく、おいてくなよ」




「ああ、ごめん。俺が朝飯食べてる時、まだ布団の中だったから、今日もおいてくしかないなぁって思って」




「みくは優しさの欠片もねえ奴だな~」





「それはあっすーだろ」





おれが反論すると、昇降口に飛び込んで来た男にギロリと睨まれた。



少しつり上がった目元が、まるで刃物のように恐ろしく見えた。




「相変わらずうるせえな、“がさつなばさお”は」




「はぁ?!もういっぺん言って見ろ!!」




おれは、スリッパをだらしなくつっかけるあっすーのリュックに蹴りを入れた。


亡き祖父直伝の少林寺拳法はこういう時に役立つ。


でも、この男勝りな態度が周りの誤解を深めてしまう原因となっている。




気づいた時には、既に遅し。




 
「土門さんって本当に女の子なの?」





「女性の品格に欠けるよね~」






「一体どうしたらああなるの?」





「橘ツインも大変だね」





「あんなのが幼なじみなんてね、かわいそ」









その通りだ。


全くその通りだ。


おれには女性の品格などない。






だけど…







だけどな…









「ホント、オレらかわいそ~」




あっすーのその一言はおれの心臓のド真ん中を射った。






「翼、行こう」








みっくんの声が聞こえたはずなのにしばらく動けなかった。


稲妻に撃たれたかのような衝撃が体中を駆け巡った。


おれの知っているようで知らないおれが、ひょっこりと顔を出していた。
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