ずっとキミが好きでした。
「翼、ごめん」








みっくんがわざわざ家に来て、おれに告げた。

 
みっくんはもちろん反対してくれたが、最初はなっつんの正式加入を嫌がっていたドラムとピアノも、だんだんとなっつんの声や人柄に惹かれ、最終的には認めたという。


多数決で決まったことに何も反論することは出来ない。


みっくんが反発して抜けてしまえば、彼らが築いてきたものが全て壊れてしまう。



今日帰ったら、あすに考え直すように言う。


みっくんはそう言ってくれたが、おれは止めた。


おれの大切な人たちが輝くのを妨げる権利はおれにはない。


そうわかっていたから。












 
だけど、


 



だけど本当は、






取られたくなかった。






おれが大切にしてきたものを全て奪っていくなっつんが憎くてたまらなかった。






あの日なっつんを連れていったことを心底後悔した。







でもーーー







嫌いになりきれないから、







大切なのは変わらないから、







身を引くのはおれの方だ。













枕に顔を押し付け、暑いのを我慢して布団をかぶって泣いた。






声が枯れるまで、





涙が無くなるまで、





心が浄化されるまで、






泣いた。





泣いて、





泣いて、





泣いて、






泣きまくった。













夜が明けたら全てなくなって、生まれ変われる。


そんな馬鹿なことを想像していた。
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