ずっとキミが好きでした。
“あっすー”こと橘明日音(たちばなあすと)と出会ったのは幼稚園に通い始めた時だった。


一軒あたりの田んぼの面積が広いから、ご近所といっても数百メートル、いや数キロ離れたところにお隣さんは存在する。


そのお隣さんが橘家だった。


祖父母から双子の兄弟が住んでいると聞かされていたから、存在自体はもっと小さい頃に知っていたが、なかなか出会わなかった。


おれは女の子らしく、祖母に買ってもらったシルバニアファミリーで、一人おままごとを楽しんでいた。


メスうさぎとオス犬を結婚させるという有り得ない物語を作り上げ、その子供は猫の姉弟だった。



おれがシルバニアに夢中になっている間に兄の耀(ひかる)が、先に橘ツインと仲良くなった。



橘ツインが生まれるまで近所に男がいなかった兄はさぞかし嬉しかったのだろう。

 
来る日も明くる日も、橘ツインとサッカーした、鬼ごっこした、缶けりした、カブトムシを捕った、喧嘩した…なんていうようなたわいない話を、食事中に切々と語っていた。


それでも、おれはシルバニアの方に興味をそそられていたから、耀の話は右から左に流していた。
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