ずっとキミが好きでした。
突発性難聴は私も聞いたことがあった。




患者数は日本で約35000人。


耳に水が溜まっているような感じがし、耳なりやめまい、吐き気、嘔吐も伴うこともあるらしい。


発症から一週間以内で今後の経過が決まってしまい、完治する人は患者全体の三割しかいないと言われている。



 

「明日音の異変に気づいたのは、文化祭の三日前。いつもズレないところがズレたからおかしいなって思って問い詰めたら、右耳が聞こえづらいって言った。俺と一緒に病院行って検査して突発性難聴だって診断された」






「病気だってわかってたのにどうして文化祭で演奏したの?!安静にしてなきゃ、ますます酷くなるでしょ!」







「俺もステージに立つのは止めようって言ったんだ。だけど…あすのプライドが許さなかった。オレたちの音楽を楽しみにしてる人たちがいるのに、オレがやらないなんて有り得ないって言って、意地でステージに立ったんだ」






我が強いのも、プライドが高いのもこういう場面で仇となる。


明日音くんらしいけれど、決してムチャしてはいけなかったと思う。




私も気付いたなら、やっぱりちゃんと止めるべきだった。


泣く前に明日音くんから音楽を一度引き離さなければならなかったんだ。




私は見て見ぬふりをしてしまった。


他人を責める権利は私には無い。





肩を落とした私の頭をみっくんは優しく撫でてくれた。







「翼が悪いんじゃない。誰も悪くないんだ。あすは強いから、絶対立ち直ってくれる。薬も効いてくれば、またギター弾けるようになるよ。だから心配しなくていいからね」








みっくんの発言はいつも正しい。


だけどこんなに説得力に欠けているのは初めてだ。


私はみっくんの三歩後ろを死んだ魚のような目をして歩いた。





今私にできることって何だろう。
 

どうしたら明日音くんは元気を取り戻してくれるだろうか。






授業中もそのことが頭から離れず、私は一日中考え込んでいた。






 


そして…ーーー決めた。










私にできることはこれしかない。








真っ赤に燃える夕日に照らされながら私は彼の元へと駆けた。
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