ずっとキミが好きでした。
クリスマスまであと2週間と迫る頃には、男女問わずクリスマスパーティーの計画を立てることに夢中になり、期末テストの結果はなんのそのという感じだった。


私は青春を満喫している彼らを羨ましくも憎ましくも思いながら見ていた。





「翼」





休み時間、私が机に突っ伏していると、頭上から聞き覚えのある声がした。


ゆっくりと顔を上げると、視線の僅か20センチ先にみっくんの透き通った瞳があった。


びっくりして顔を引っ込めると、みっくんが「何そんなに驚いてんの?」と小首を傾げた。


私が呼吸をするのもままならまいでいると、みっくんが口を開いた。





「翼ってさあ、クリスマス、何か用事ある?」






「いっ、いやあ、ない…けど」






「ならさ、俺とイルミネーション見に行かない?最近、M市に出来たショッピングモールの。まあ、嫌ならムリしなくても良いけど」







私は全力で首を真横に振った。

 
16歳にしてばあちゃんと二人のクリスマスでは、正直残念で華がないと思っていたから、ちょうど良かった。


私の寂寞の思いは回避出来そうだ。






「じゃあ、決まりね。俺、午前中部活だから、2時ぐらいに翼ん家に迎えに行くね」




   


「わかった。ありがとう、誘ってくれて」







みっくんは満面の笑みを私に向け、くるりと身を翻して自らの席に退散した。








私は一瞬喜んでしまった自分に絶望した。



思い起こせば、クリスマスは…


12月25日は…


私にとって一年で一番大切な日。


忘れたくても忘れられない、大きな意味のある日。






ヒーターで暖められた教室が季節はずれの汗を誘引した。
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