ずっとキミが好きでした。
みっくんが私を思ってくれていることはずっと前から知っていた。


いつから私を女の子として意識していたのかは本人のみぞ知るが、私がみっくんの気持ちに気付いたのは、高校生になってからだ。




橘ツインの片割れ。


しっかり者で優しくて、時に強引な双子の兄、橘未来音…。


幼い頃から私を何度も励まし、私は何度もその優しさに救われて来た。




私が膝を擦りむいたら、黙ってハンカチを差し出し、「痛いの痛いの飛んでけ~」と魔法をかけてくれた。


みっくんが作詞したり、作曲したりした曲にアドバイスすると、いつも「ありがと、翼」と言いながら私の頭を撫でてくれた。





そんなみっくんがこの前見せたヤキモチ。






「俺には作ってくれないの?」








私の頭の中に、みっくんとの思い出が、噴水のように吹き上がって来た。

  
水圧で胸が押しつぶされそうになる。


みっくんのひとつひとつの表情を思い起こすと、私はますます萎縮した。










言わなきゃ。



自分の気持ちを。



大切な人だから、ウソはつけない。











私は再びみっくんの瞳を見た。


青白い炎に飲み込まれてはいけない。


私には私の炎がある。






だから…






みっくんと同じ色には…ーーなれない。













「みっくん…ーーあのね…」






「ごめん、翼!」






「えっ?」







みっくんは突然勢いよく頭を下げた。


びっくりして私は一方後ずさった。


私たちの横を通り過ぎようとしていたカップルが、白い目でこちらを睨んでいた。






「付き合って、なんて言わないから。謝らなくて良いよ。俺、翼の気持ちわかってるし…」






「みっくん…」
 





「これ、クリスマスプレゼント」






みっくんから手渡されたのは、赤いリボンがついた小型の白い箱だった。


「開けてみて」と促すみっくんに従ってリボンをほどき、蓋を開けると、中には可愛らしいスノードームが入っていた。


初めて見るスノードームに興奮して、雪をたくさん降らせるために、一生懸命上下させた。






「振り回しすぎだよ、翼」






「ごめん!嬉しくって、つい…」






私たちはしばらくスノードームの中にいた。


サンタクロースが赤い屋根の煙突から這い出てきて、トナカイは真っ白な庭でサンタの仕事の無事を祈り、鼻を真っ赤にして待っている。







二人で笑っているうちに雪が降ってきた。


ふわりと舞って肩に降りて、ゆっくりとコートに染み込んでいった。









みっくんとはこの位の距離が一番心地良い。


みっくんはいつも、隣で優しく私を見守ってくれている。


そんなみっくんは私のもう一人のお兄さん。


困ったら頼れば良い。


私は頼りっきりで良い。


甘えて良い。




そんな関係が私と橘未来音だと改めて思った。







みっくんの顔を見ると、なんだか大きな重い荷物を下ろしてほっと一息ついたように見えた。


告白にも体力と気力が相当必要だ。 


エネルギーを消費して疲れているみっくんに、私は一つわがままを聞いてもらうことにした。






「みっくん、私…ケーキ食べたいなぁ」






「そっか。もう4時過ぎたし、おやつの時間かぁ。翼、何食べる?」







「そうだなぁ…今日はチョコの気分かな」







「よし、じゃあ食べにいくか!」






「レッツゴー!」








私とみっくんは何事もなかったかのように、幼なじみとして適切な距離を保ちながら、クリスマスデートを楽しんだのだった。
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