ずっとキミが好きでした。
イルミネーションを見に、高速道路を使ってわざわざ隣県まで行った帰りに悲劇は起こった。





2歳だった私は、母の顔も父の顔も、もちろん当時の状況も上手く思い出せない。


事故の記憶はほとんどなくて、耀から聞いたことに勝手に色付けして、ある程度成長した時にその事故を想像し、自分なりに解釈し、認識した。







ただ…







声だけは覚えているんだ。







チャイルドシートに乗って両足をばたつかせ、大声で泣き叫ぶ私に向かって母が叫んだ。






「翼…メリークリスマス」





父は耀に何か一言言ってそのまま気を失った。






耀は私のシートベルトを外して、ガチャガチャとドアをいじくり、開かないことが分かると、買ってもらったばかりの戦隊ものの剣で必死に窓ガラスを叩いた。






「中に子どもがいるぞ!」






「生きてる!まだ生きてる!」






後ろを走っていた若いカップルがわざわざ停車し、私たち兄妹を助け出してくれた。


私はその間、ずっと泣いていたらしい。


自分の両親と離れ離れになってきっと寂しかったのだろう。


救急車やパトカーのサイレンが激しく鳴っていたが、それ以上に私の泣き声はうるさかった。


私は、見ず知らずの若いお姉さんの腕の中でわんわん泣き続けた。


それしかできなかった。


2歳の私の唯一無二で最大限の抵抗が、泣くことだった。









しかし、いくら私が泣こうと状況は変わらなかった。








両親は搬送先の病院で死亡が確認された。




逆走して来た老夫婦の車に正面衝突され、相手もまた、帰らぬ人となった。
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