雨
「可愛らしいでしょ?」
「ええ、とてもとても。名前負けしないかが心配ですよ」
「そう?君のその品のある感じとか、まさにぴったりだと思うけどね」
彼はもう一度私に決めた名で呼びかけた。どうやら気に入ったらしい。
彼は新しく頼んだお酒を口に含んだ。カランと氷を鳴らしグラスを置いた時、店内の曲が変わった。
「これは」
「あ、さっきの…」
よく聞くと、その曲は先ほどの話の中、彼が今一番好きだと言っていたものである。あまりメジャーなものではなく、私も正直彼の持つ再生機器で聴かせて貰うまで全く知らなかった。
「マスターが気を利かせてくれたかな。」
そう言って彼がマスターを見ると、お酒を作っていたマスターがにこりと笑った。
「彼も音楽が好きなんだよ。だから俺はここが好きなんだ。」