「いい店でしょ。」

寒い中歩いた事により酔いも少し覚めたので良かった。酔ったままよくわからず来るには勿体無い店だ。

さらによく店内を見回せば、楽器が所々においてあることに気づいた。

「あぁ、これ?やっぱり音楽好きが集う店だからね、客が弾いたり歌ったり。たまにはここの店主も。」

新しく酒を頼みまた乾杯する。少し落ち着いた頃ちょうどかかっていたレコードが終わり、気づいた彼が店主に許可を取り棚からレコードを見つけ出し針を置いた。

「もうぼちぼちこういう曲だよね」

彼が選んだのは私の知らない曲で、ギターのハーモニーが絶妙に心地よい。お酒を飲まずとも酔えそうだ、と思った。

「気持ちいいよね、酒がなくても酔えそうだよ。」

思ったことを側から言われ、私は思わず吹き出す。彼は不思議そうにこちらを見たが、理由を教えることはしなかった。



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