「ここまで重なると、もう仕事をやめろと言われている気がしてきます。向いてないのかもしれないですね。」

私が少し自嘲気味に笑うといいや、と彼は否定した。そして酒を一口飲んでから続ける。

「話を聞いている限り、君はこの仕事が好きなんじゃないかと思うんだけど。」

「たしかに、今の職業は好きです。実はもともとなりたくてついた職なんです。」

「実はもう、答えは決めてるんじゃないか?」

「えっ?」

「仕事続けたいのならそうすべきだよ。不運の重なりに悔しい思いをしただろうけど、君なら大丈夫だと思う。」

まさに見透かされたようだった。
たしかに辞める気など無かったのだから。

< 16 / 34 >

この作品をシェア

pagetop