店主のギターの腕前は相当の様だ。私はまったく弾けないのだが、そんな私でもわかるほど上手い。なんて思っているのを表情から察したのか、彼は私の耳元で

「彼もうまいけど、俺の方がうまいから。」

と言ったと思ったら、立ち上がりギターに合わせて歌い出した。

これがまた驚くほど上手い。もともと話し声が落ち着いていて、甘くて優しいいい声だと思っていた。それが色気をまとって歌詞をなぞっている。

これは愛する女性の幸せを願う歌だ。




君の幸せをずっと願っている。

君が望むなら僕は今まで得た全てを捧げることだってするよ。

その笑顔を見るためならいつだって。




いつ聞いても素敵な歌。私は夢心地で、歌い続ける彼の横顔をずっと見ていた。








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