男はあっという間に一杯空け、次を頼んだと思うと、振り向きざまに、「何か共通の話題を探そうか。」と言った。この言葉に理解が追いつけないままで言った。

「大人はそう言わずに何となく探るものだと思ってました。」

「そうかも。でもこうして言った方が効率的じゃない。」

一理あるがムードがないだろう。しかしこの明け透けな感じが小気味良く、まだ少しばかり残っていた警戒心も解けて消えた。

早速、一つ一つお互いの好きなものをまるで作業のように明かしていった。酒の話、好きな食べ物の話や他にも。

最後と決めたはずの酒もう僅かになった頃、たどり着いたのが音楽の話だった。やっと見つけた共通の趣味であったが、聞けば聞くほど彼の理解の深さには驚いた。

「音楽はすごく好きなんだけど、語りすぎて結構引かれるんだよね。」

彼は序盤でそう言っていたのだが、存外私は楽しめた。話の流れより察すると、音楽の好みが近そうだったので、そのおかげかもしれない。

最後の酒のつもりだったが、ここに来て楽しくなってしまった私は悩む余地もなく次の酒を頼み、隣のその男の話を夢中で聞くのだった。



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