カウンターの蝋燭にマスターが火をつけた。時間が遅くなるとこの店は照明がより暗くなり、手元には蝋燭を灯す。より落ち着いた雰囲気になり、さらに目があまり効かなくなる為か、店内の音楽に自然と耳が傾いた。

「音楽ってその土地の文化が色濃く根付いていて、それを聴き比べるとまるで世界を旅するようで面白いんだ。」

目を瞑っているところを見ると、彼もまた聴いているようだが、話は途切れることなく続いていた。

「ルーツを調べているうちに気がついたら歴史に手をつけていたり。」

「どこかで融合してるんだよね。わかるよ」

私も彼ほど理解は深くないが、趣味と言えるほどには様々な曲を聴いているつもりだ。

「遊び心のある音が好き。」

「うん、聴き手も演者も楽しめるのが一番いい曲なのかもしれないね。」



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