そして、彼はいくつかの楽器を、特にギターを嗜むのだと言う。自ら上手いと言うほどで、相当自信があるらしい

「俺のギターか、聴かせてあげてもいいんだけどね。」

忘れられなくなっちゃうぞ。と続けた彼の勝ち気な顔が可笑しく、彼をふと呼ぼうとして名前をまだ知らないことに気がついた。

「今更ですけど、私、あなたのことはなんてお呼びすれば?」

彼は少し唸りながら悩むそぶりを見せた後に、無邪気に笑って言った。

「ふふ、教えない。どうぞお好きなように。」

彼も酔ったのだろう、でなければ出ない答えだ。きちんと名前を教えて欲しかったのだが、正直この提案は面白かった。

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