赤い刻印 - Secret Love -
突然名前を呼ばれて心臓が飛び出しそうになった。
本当に今の私は不審者以外の何者でもない。
「一沙ちゃんでしょう?どうしたの?」
ゆっくりと振り返ると、そこには先生のおばあちゃんが笑顔で立っていた。
発見されてしまったからには逃げるわけにもいかず私も笑顔を作る。
「こんにちは。私のこと覚えててくれたんだ」
「もちろん」
一度ご飯を食べただけなのに。
先生の話だと軽い認知症で、知り合いのことすら忘れてしまうことがあるらしい。
そんなおばちゃんが私の名前までハッキリ覚えててくれたのは意外だった。
「あの、先生は?」
「明仁はまだ帰ってないのよ。良かったら上がって」