赤い刻印 - Secret Love -
肩をぎゅっと掴んだまま懇願するように香川の目を見つめる。

「私のことなんてどうでもいいの。でも私は先生を守りたい!」
「…」
「秘密にしててほしい。今の私にお願いできるのはそれだけ」

私はそう言って香川に背中を向ける。
長い長い沈黙。
もう駄目かなと思ったその瞬間、背中側から香川の声が聞こえた。

「…分かったよ」
「え!?」

香川の消え入りそうな小さな声に、私はバッと勢いよく振り返った。

「私も先生には辞めてほしくないからね。秘密にしといてあげるよ」
「ほんと?」
「うん」
「…ありがとう」

危ない賭けかもしれない。
だけど私は香川の言葉を信じたい。


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