赤い刻印 - Secret Love -
「ますます行かなきゃ~。バイト代くれるなら毎日行くよ?」
「ハハ」

先生の笑った顔、嫌いじゃない。
たまにはみんなの前でも笑ってみればいいのに。
先生ってだいぶ得してると思う。
女子はそういうのに弱いと言うしね。

「ねぇ、先生」

私は教室の隅にある透明の花瓶を持ち上げた。
今日もそこには赤いバラが1輪だけ刺さっている。

「先生バラが好きなの?これ」
「まあ」
「家の庭にもたくさんあったね」
「俺っていうより死んだ母親が好きだったから」
「お母さん?」
「うん」
「先生のお母さんってどんな人だったの?」
「ん?そうだなー」

少し悩んだように首を傾げた先生。
しばらくして何かを思いついたように私のほうを見つめた。

「まさにバラみたいな人だった」
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