赤い刻印 - Secret Love -
上辺だけの発言だとは思っていない。
だけど彼だって突然こんな大きな娘ができて、一緒に暮らしていくのは窮屈なはずだ。

「気持ちだけありがとうございます。お母さんのこと、よろしくお願いします」


あーあ、またいい子ぶってしまった。
いつもこうやって本音を隠してしまう、それが私の悪いところだ。


***


「村田先生?さっき生徒に呼ばれてどこか行ったわよ」
「そうですか」

職員室の中で一番日当たりが良さそうな窓際の席。
そこが村田先生の席だ。
私はその机の上に1枚の紙を置いた。
…昨日の面談で渡された進路希望調査表。

「矢沢?」

いつの間にか先生が後ろに立っていた。

「もう書いたのか」
「一応」
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