ただ、逢いたくて―P.S.愛してる―
*過去*
時は紅葉舞う高校二年生の秋。
「大好きだよ、菜っちゃん」
「馬鹿」
「エヘッ♪」
いつもの帰り道。
いつもの青いベンチで。
いつものように笑う彼。
あたしをからかうのが趣味らしい。
「冗談はいいから早く帰ろ」
そして、あたしの特技はそんな彼の言葉を流す事。
「酷いな~菜っちゃんは」
「酷くない。早く帰るよー」
「ねぇ。今、俺が駆け落ちしようって言ったらどうする?」
空を見上げ、呟く彼にあたしは
「いきなり凄い冗談言うよね、そこまでいくとツッコめないから」
その言葉を流した。
その時のあたしは貴方の事を何ひとつ分かっていなかったよね...
「冗談?真面目に。好きだよ」
急な言葉にあたしの胸は鼓動を速めた。
あたしはなんて返したらいいのか分からなくなって俯くしかなかった。
「さて、帰ろ♪」
そんなあたしを知ってか、彼がベンチから立ち上がった。
「うん」
それにつられるようにしてあたしも立ち上がる。