五感のキオク~忘れられないその香り~
どうしてこうなったのかわからない。

いや、本当はわかっている。



彼のその香り。

それに酔わされた私は、




「いつ口説こうかと考えてた………」


そう言って至近距離で見つめて私に口づける。


「いつか啼かせてみたいと思ってた」


彼の匂いを強く感じてクラクラする。



この匂いに抱かれたかった。

この香りが好きだ。

彼本来のものと交り合い、より官能的な香りに変わっている。


それとともに彼の表情も雄のそれへと変わっていった。


「…あなたはいつも遠くからそんな目で見てた」

「気付いてっ、……たんですか?」



それなのに今まで知らんふり。

きっと彼にとってはそれだけの存在。


「そりゃね、そんな熱い視線向けられたら気付くでしょ」

「そんなつもりは、」


なかったとは言い難い。

気付かれないよう、遠くに居る時に見つめていたのは事実。



ホテルの一室で

見つめ合いながら

口付けを交わし

攻防を繰り返す



近づけば近づくほどその香りは強くなる―――
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