五感のキオク~忘れられないその香り~
彼の真剣な表情も

時折見せる熱っぽい眼差しも

嗅覚から感じるその刺激ほど私を熱くさせない。


だから目を閉じて

胸一杯に彼の香りを吸い込む



彼の汗と共に香りが強くなる

より刺激的な香りへ


その香りが私を追いつめていく―――






私の呼吸が落ち着くまで待っていた彼は、額に軽くキスをしてベッドから出ていく。


「ゆっくりしてて」


ゆっくりもなにも、

動けないのは一目瞭然。


そのままベッドでまどろんでいると、彼はタオルで髪をふきながら戻ってきた。


「それで?結論は出た?」


ふわりと香ってきたのはボディーソープの香り。

先ほどまでの官能的な香りはどこにもない。


全部洗い流された匂い。

その香りとともにさっきあった事までも流されたように感じた。


「最後、かしら……」

「そう?それは残念」


残念なんて言ってるけど、少しもそんな顔をしてはいない彼。

結局、そんな存在でしか……


「一つ聞いていいかな?」

「…何?」

「俺の何が君を引きつけた?」


言ってもいいんだろうか?

こんな変態じみた事。
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