夜に溶けて消えた。

One

世界が壊れた。

鋭く響いたクラクション。


耳を劈く甲高い叫び声。


頬に痛いほどに当たる冷たい雨。


一刻も早くその場から立ち去りたかった。
嫌な予感がした。


それなのに、私は足が縫いつけられたようにそこから動けなかった。


人が私の横を通り過ぎていく。


ゆっくり。ゆっくり振り返った。


息を飲んだ。


周囲の誰もが状況を判断しきれずに
立ち尽くしたり、駆け寄ったりする中、
私はただ呆然と周囲の音を確かめ、
目だけを動かしていた。