夜に溶けて消えた。
何があったのか、そんなの嫌な予感がした時点でもう気づいていた。
だけど、信じられなかった。
信じたくなかった。
嘘だと思いたかった。
多くの人が私の横を掠めていく。
それにつられるように人混みをかきわけ
一歩一歩進んでいった。
「事故だって」
「1人じゃねえじゃん」
「救急車呼んだの?」
煩い。煩い。煩い。
私の視線が一点に止まる。交差点の端。
「…ッ」
人の波掻き分け、掻き分け、
やっとの思いで辿り着いた先は…
視界いっぱいに広がる朱に目を奪われた。
噎せ返るような雨と血の混じった匂い。
肌寒いのに背中に流れる嫌な汗。
もう 周りの人の声なんて気にならなかった。
ねえ、どうして…?
私の世界がセピア色に色褪せた瞬間だった。
世界が壊れた。