君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「わ、私のダンスは芸術なんて言えるレベルじゃなくて……

人並みの魅力があれば……苦労しなかったんですけど……」


「馬鹿だな」と私を見上げた澪音が熱っぽい瞳をしていたから、視線を向けられただけで動けなくなってしまった。


「俺の目に柚葉がどう映っているか、今から教える」


澪音は私の腕に巻かれたネクタイを説くと、私を抱えてベッドまで連れていった。そのまま私に覆い被さり、手のひらをベッドに縫い止める。

首筋にキスの雨が降り、バスローブの帯が解かれた。高鳴る胸と恥ずかしさで思わず顔を背けると、耳のすぐそばで切実さを増した澪音の声がした。


「好きだ、好きだ……好きだ。

これだけのことを言うのに、こんなに時間がかかってしまった」


「え?」


「結婚の自由も無い身の上で、柚葉に気持ちを伝えるのは、不実だと思ったんだ。


今なら、もう言える。好きだ。

柚葉、俺のものになって。俺だけのものに」


「澪音……私はずっと……」


その先はまた、言葉を続けることができなくなった。

遮るものがなくなった肌に澪音の熱が直接刻まれていくから、私は言葉になる前の声をあげることしかできない。


「……っん、澪音」


切なげに眉を寄せる澪音の顔を見上げて、初めて見るその表情を、ずっと見つめていたいと思った。

でも、澪音の指が体を滑る度に、私の意思とは関係なく瞼をぎゅっと閉じなければならず、途切れ途切れにしか澪音の顔を見られない。
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