君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen……」


「……?」


吐息混じりに呟いた声は、私に聞かせるものではなかったようだ。焦れたような視線が絡んで「もう二度と、離さない」と言い直された。


力の入らなくなった体で澪音のキスを受け入れていると、逞しい胸板と腕に隙間なく包まれる。


そうして、私の体はいつのまにか澪音に支配されていた。瞬きひとつさえ、思い通りにできないなんて知らない感覚だ。


長い長い間何処までも澪音の熱に溶かされていき、沸き立つような甘美な痺れに飲み込まれる。


羞恥と本能の天秤はとっくにバランスを失っていた。狂おしいほど澪音に求められているのが分かったし、私も澪音を欲していた。


そのため、伝えたかった言葉を言えたのは結局全てが終わった後になってしまい……



「……だから、私の失恋相手は澪音だったんです」


「どうしてそれを早く言ってくれなかったんだ……!」


頭を抱えた澪音に横目で睨まれる事態となってしまった。


「何度も伝えようとしたんですよ?

でも、その度に澪音が邪魔して……私を喋れなくするから……」


赤面してしどろもどろになった私を見て澪音か笑う。


「俺が言ったのは、一緒に生活してるこの10日間程の間で言う機会はあったろって意味なんだけど。

でも、まあいいか。お陰でその顔が見れたなら。

さっきはまともに話もできなくなるほどだったなんて、良いことを知った」


悪戯に投げられる視線に、私はますます顔を真っ赤にするしかなかった。
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