君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「大体ね、私がこんなに心配しているのは、澪音。あなたがひよっこだからだとわかっている?」


かぐやさんが標的を澪音に移すと、澪音は「今日は祝いの席なんだから」と誤魔化して、逃げるように弥太郎さんと会話している。


かぐやさんの前でいつもの調子を崩す澪音は微笑ましいけれど、どうしようもなく嫉妬の感情が混ざるので複雑な気持ちになる。


そんな私の気持ちをよそに、かぐやさんはとんでもないことを言ってのけた。


「据え膳食わぬは男の恥というけれど、澪音は口先に持ってこられた据え膳を、叩き割って投げ捨てるような失礼な男なの。

それもすっごくセンチメンタルな理由で」


「わぁーっ! その件私は何も聞きたくないですー!!」


『口先に持ってこられた据え膳』が具体的にどんな状況だったのか凄く気になってしまうんだけど!

だいたい、弥太郎さんがすぐ側にいるというのに、何てことを言うんだこの人は。


「私は澪音が当主を継ぐことについて、彼の才覚には何の疑問もないのよ。

でもそういう生娘みたいな性根は心配でしょうがないわ」


ななな? きむすめ?


かぐやさんにかかれば澪音はうぶな女の子扱いですか……。澪音はがっくりと項垂れて


「いい加減セクハラ発言をやめてくれ」


と渋い表情だ。この状況、弥太郎さんは大丈夫なのかな……と恐る恐る弥太郎さんを見るあげると、平然とした様子で「きにするな」と口を動かした。


気にしてないんだ!


弥太郎さんの度量の深さを思わぬ所で知った気がする。
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