君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
このドレスはロイヤルブルーが基調となっていて、シンプルなデザインながら光沢のある鮮やかな色が目を惹く。

髪飾りには特殊な形をした銀の葉が揺れていて、歩く度に繊細な光を放っている。

全体的に甘さの少ないすっきりとしたデザインで、媚びないノーブルな印象だ。


「もちろん凄く素敵です。私には勿体ないくらい……」


澪音の胸元にも、私の髪飾りと同じデザインの葉が飾られていた。


「そんなことないよ。本当によく似合っているから。

踊るともっと綺麗に映えると思う。」


にっこりと微笑んで右手が差し出されるので、軽くお辞儀をして澪音に手を重ねた。


流れる曲目はエリック・サティの「ジュ・トゥ・ヴー」をワルツ用にスローにアレンジしたものだ。


ワルツのホールドを組むと、肩甲骨付近に澪音の手が添えられた。ドレスの背中が開いているので、手のひらの温度が直に伝わってくる。


ダンスレッスンでいつもそうしているのに、澪音の手が当たっている辺りは不思議とくすぐったくて熱いような感覚になる。


しかも、ワルツは互いの体を密着させないと躍れないのだ。お腹から骨盤、太股の内側にかけてをぴったり玲音に沿わせると、私の鼓動が伝わってしまうんじゃないかと心配になった。


「この曲知ってる?」と聞かれ、声が上手く出ないので小さく頷いて答える。曲目の意味は「おまえが欲しい」だ。


「この歌詞のように、柚葉を俺のものにしたい気分」


耳元で囁かれて、息がつまる。


私に「後腐れなく」いて欲しいくせに。


一時の気分だけでそんなことを言わないで。
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