君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
澪音は私の手首に唇をつける。そのゆっくりとした動作に思わず顔が火照ってしまった。


「澪音、車の中ですから……」

「車中だからこの程度で我慢してる」


この程度でと言われても、澪音に触れられれば私の体は電気でも走ったかのように痺れて、頭がぼうっとしてしまうのだ。


「今日はこれから一緒にいられますか?」


「急にそんなに可愛いことを聞くなよ。自制が効かなくなるだろ。

もちろん、朝まで一緒にいるよ」


澪音は、これから起こることの予告でもするように私の手のひらを撫でた。長く美しい指先が何度も私をなぞるので、次第に息が上がるのを隠すのが難しくなってしまう。


そんな私を知ってか知らずか、澪音はぼそっと呟いた。


「俺がかぐやに対して弱いというのは違う。あれは単なる自衛と防御の結果だ。

俺は、いつも柚葉にだけ臆病なんだ」


「んっ……、私にですか……?

澪音はいつも自信に溢れてるし……そうは見えませんけど……」


「それは柚葉が知らないだけ。俺は自分でも笑えるくらいに柚葉に対しては臆病で、弱虫なんだ」


「よわむし……って」


その言葉の可愛らしさに、思わず笑みがこぼれた。


「今日だってずっと言うタイミングを逃してたんだ。

君に印をつけても良いか? この前のような見せかけではなくて、本来の意味で」


しるし、の意味を図りかねていると、澪音は小さな箱を取り出した。蓋を開けて私に見せてくれたのは、白銀に輝く華奢なネックレスだ。


キラキラした透明な輝きが二つ付いている。良く見ると見覚えのある葉っぱの形のモチーフだった。


「きれい……これは樫の葉ですか?」

「そう、樫月の新葉」

< 112 / 220 >

この作品をシェア

pagetop