君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「お茶くらい、私が淹れますから……」
「大丈夫」
前に澪音がお茶を淹れようとして、不器用で火傷しそうになっていたので心配になる。
以前と同じように茶葉を入れずにティーポットにお湯を注いでいるので内心ヒヤヒヤしていると、さらにティーカップにもお湯を注いだ後で一旦全てを流す。
この前とは違って、丁寧に茶器を温める手順を踏んだようだった。その後はびっくりするほど優雅な所作で紅茶を淹れてくれる。
「澪音、執事さんみたいですね……!どうしたんですか?」
「実は茂田に習った。紅茶もまともに淹れられないなんてと反省したんだ」
「澪音は紅茶なんて自分で淹れなくても何の不自由も無いんですから、反省なんてしなくたって……」
「柚葉にお茶も淹れてやれないのは、不自由だろ」
澪音はそう言って照れたよう視線を逸らす。忙しいのに、いつの間に紅茶の淹れ方なんて習っていたんだろう。
紅茶と一緒に、オーナーから貰ったシュトーレンを二人で食べて。ずっしりとドライフルーツが詰まったケーキは、甘くてスパイシーな大人の味だった。
そして、その後の時間はもっと濃密で甘く、全てを覚えていたいのに記憶は所々しか残ってない。全身が蕩けるような長いキスの後は、呼吸を忘れてしまうほど澪音の身体に翻弄された。