君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「こちらへ」と、奥につづく回廊に案内された。綺麗に手入れされた庭園が見えて、植木が控えめにライトアップされていた。
「ここは静かで人目にもつかないから、樫月家御用達の料亭なんですよ」
「杉崎さんは……、樫月家についてすごく詳しいんですね」
「調べるうちに、知らない間に詳しくなってしまいました。俺自身はこういう旧家の体質には虫酸が走る方ですけど」
中央が大きく吹き抜けになっている贅沢な空間の階段を上り、杉崎さんが指す方向を見下ろすと、そこには澪音がいた。穏やかな微笑を浮かべて誰かと……向かいの女性と話をしている。
澪音は女性にお酌をすると、相手の女性も澪音のお猪口にお酒を注ごうと手を伸ばす。お銚子を受け取ろうとする手が澪音と触れあって、恥じらうように顔を伏せた。
「『……なく……、堅苦しいのは俺も苦手で……』……?」
「え!?柚葉さん読唇術ができるの? 探偵みたい」
澪音の口の動きを真似して呟くと、杉崎さんは驚いていた。
弥太郎さんが唇だけで会話するのを……主に私に向けられる罵詈雑言の類いを……聞いているうちに、少しだけ口の動きだけでも話がわかるようになっていた。澪音と弥太郎さんは、口元が良く似ている。
でも、何を話しているかなんて分からなくても、澪音の女性に対する優しい気遣いは見てるだけでわかる。女性の方も澪音の言葉に嬉しそうに笑って頬を赤く染めている。
「ここは静かで人目にもつかないから、樫月家御用達の料亭なんですよ」
「杉崎さんは……、樫月家についてすごく詳しいんですね」
「調べるうちに、知らない間に詳しくなってしまいました。俺自身はこういう旧家の体質には虫酸が走る方ですけど」
中央が大きく吹き抜けになっている贅沢な空間の階段を上り、杉崎さんが指す方向を見下ろすと、そこには澪音がいた。穏やかな微笑を浮かべて誰かと……向かいの女性と話をしている。
澪音は女性にお酌をすると、相手の女性も澪音のお猪口にお酒を注ごうと手を伸ばす。お銚子を受け取ろうとする手が澪音と触れあって、恥じらうように顔を伏せた。
「『……なく……、堅苦しいのは俺も苦手で……』……?」
「え!?柚葉さん読唇術ができるの? 探偵みたい」
澪音の口の動きを真似して呟くと、杉崎さんは驚いていた。
弥太郎さんが唇だけで会話するのを……主に私に向けられる罵詈雑言の類いを……聞いているうちに、少しだけ口の動きだけでも話がわかるようになっていた。澪音と弥太郎さんは、口元が良く似ている。
でも、何を話しているかなんて分からなくても、澪音の女性に対する優しい気遣いは見てるだけでわかる。女性の方も澪音の言葉に嬉しそうに笑って頬を赤く染めている。