君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「待ってかぐや。今は大事な話の途中なん……」


「二人とも同じ部屋に暮らしているのだから、今は私に譲ってくれても良いでしょう。

私も大事な用があってわざわざ来てるんだから。これは義姉命令よ?」


かぐやさんは「さあ、早く」と私を引きずるようにドアへ連れていく。いつも思うけど、かぐやさんの有無を言わせない迫力は何なんだろう。


「そんなに勢い込んで、柚葉に何の用があるんだ?」


「何って、柚葉さんの花嫁修行の講師に来たんじゃない。前に言ったのを忘れたの?」


「それは心底どうでもいいよ……

かぐやが暴走すると大抵ロクなことにならないんだから、柚葉のことで張り切るのはやめてくれ」


「澪音ったら口を開けば失礼なことばかり言って。あなたにはどうでもよくても私には重大事よ。前に講師をすると約束したのに、私を口先だけの女にさせるつもり?」


「かぐやさん、本当にお気持ちだけで十分ですから……そもそも私には花嫁修行は必要無くて……」


「あら、柚葉さんって意外と自惚れ屋さんね。修行などなくても完璧と仰るのかしら」


「いやそうじゃなくて、花嫁っていうのがもう……

あの、かぐやさん?……待ってー!」


かぐやさんの意外なほどの怪力に引っぱられて部屋を出る。その時にかぐやさんは澪音を振り返って告げた。


「寂しがりの澪音が私たちの邪魔をしないように、お土産を持ってきたわ。

一時間後の役員会に向けた最新資料よ。弥太郎さんが修正したの。会議の前に急いで目を通しておかなきゃ駄目よ」
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