君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
視線にどきっとして目が泳いでしまう。


「そういえば、この髪飾り……

樫月家の新葉というものなんですね。

可愛いけど不思議なデザインだと思っていたら、そんな大事なものだったなんて。始めに教えて下さいよ」


澪音は困ったように笑って、


「柚葉の情報収集力は侮れないな。

でも、説明すれば身につけてくれなかったろ?」


と言って私の髪飾りに触れた。


「当たり前です。さっきはすごく困ったんだから」


髪飾りを外そうと手を伸ばすと、


「簡単には外れないよ。落ちたら縁起悪いから、きつく付けられてるはずだよ」


と笑った。


「次期当主の御披露目をするパーティーなんて、実質的には花嫁選びみたいなもんだからな。

今日はいろんな家から嫁候補が集まってるわけ」


「だから澪音の隣にいた私が敵視されてたんですね。この飾りもついてるし……」


「うん、いずれあの中の誰かと結婚することになるんだろうけど、まだ逃げたくて。

俺はもう相手がいるからっていうアピールに手を貸してもらってたんだ。嫌な思いをさせて悪かった」


諦めたように静かに澪音が笑う。


「結婚の自由は無いんですね……」


「小さい頃からそれが普通の環境で育ったから、それはもう受け入れてる。

周りも政略結婚だらけで、外に女を作ったり、男を作ったり。多分俺もそうなるんだろ」

私には想像できない、凄い世界だ。
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