君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
杉崎さんがクロスカフェに来たときに澪音とは終わったことだけ伝えると、不思議な提案をされる。


「それなら柚葉さん、気分を変えるために一緒にウィーン行きませんか?

俺はあなたのパトロンってことで構わないから」


「そんな現実味のないご冗談を……」


「これでも本気で言ってるんですよ。

ダンス留学と思えば気楽でしょう。あなた一人養うくらいは何も問題ないですから」


「でも、私には杉崎さんに付いて行く理由ないですって」


「理由なんて適当で良いじゃないですか。

俺はウィーンでも柚葉さんに会えるし、柚葉さんも一流の教育を受けて思う存分ダンスができるし、お互いハッピーでしょう?

この話、考えておいてくださいね」


突飛な話をして店を出る杉崎さんの背を見送りながら、もしかしたらそういうのも悪くはないかなと思っていた。


何でもいいから、これまでの日々を全部リセットしたいと思ってしまう。


毎日淡々と過ごしながら、味のしなくなった食べ物を食べて、熱が消えたようなダンスを踊る。ずっと大好きだったクロスカフェでのバイトすら、澪音が弾いていたピアノが目に入ると辛かった。
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