君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「このピアノ演奏する人、雇わないんですか?」
オーナーに聞いてみると、渋い顔で髪に手をあてる。
「雇ってもいいんだけど、ウチの常連さんは澪音のピアノに慣れて耳が肥えてるからなぁ。
それにこのピアノは澪音からの貰い物だし」
「えぇ!?そうだったんですか? 随分豪華な貰い物ですね……」
「最初に澪音が店でピアノ弾いたときに、何とも言えない微妙な顔をしてね。『頼むからピアノを変えさせて』って言われて、その時に入れ換えたものなんだ」
「それじゃこのピアノ、きっと凄い高級品ですよね。今まで知らずに触ってた……」
「澪音が留学中に使ってたピアノなんだって。オーストリアのピアノメーカーのものだと聞いてるけど」
このピアノは私が知らない頃の澪音と、ずっと一緒に過ごしてきたんだ。そう思うとますますピアノの存在感が増した気がする。
バイト中、視界の片隅にいつも見えているピアノ。店が混雑して忙しくなっても、黒く艶めいたピアノはまるで澪音本人のように美しく存在を主張している。
「柚葉さん、この前の話考えてくれました?
俺を好きかどうかなんて今はどうでもいいし。一緒に来てくれたら、いつか俺に本気になるんだから」
週末に来た杉崎さんが、冗談とも本気ともとれるような笑顔でウィーン行きについて聞いてくる。
オーナーに聞いてみると、渋い顔で髪に手をあてる。
「雇ってもいいんだけど、ウチの常連さんは澪音のピアノに慣れて耳が肥えてるからなぁ。
それにこのピアノは澪音からの貰い物だし」
「えぇ!?そうだったんですか? 随分豪華な貰い物ですね……」
「最初に澪音が店でピアノ弾いたときに、何とも言えない微妙な顔をしてね。『頼むからピアノを変えさせて』って言われて、その時に入れ換えたものなんだ」
「それじゃこのピアノ、きっと凄い高級品ですよね。今まで知らずに触ってた……」
「澪音が留学中に使ってたピアノなんだって。オーストリアのピアノメーカーのものだと聞いてるけど」
このピアノは私が知らない頃の澪音と、ずっと一緒に過ごしてきたんだ。そう思うとますますピアノの存在感が増した気がする。
バイト中、視界の片隅にいつも見えているピアノ。店が混雑して忙しくなっても、黒く艶めいたピアノはまるで澪音本人のように美しく存在を主張している。
「柚葉さん、この前の話考えてくれました?
俺を好きかどうかなんて今はどうでもいいし。一緒に来てくれたら、いつか俺に本気になるんだから」
週末に来た杉崎さんが、冗談とも本気ともとれるような笑顔でウィーン行きについて聞いてくる。