君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
手の甲に澪音の手がそっと重ねられて、電気でも流れたかのように動けなくなる。


「他にも言うべきこと、聞きたいことが色々とあるが、それは後だ」


澪音が私を包み込んで「もう何も心配いらない」と耳元で声がした。


あたたかな澪音の胸、力強い抱擁。


全部諦めた筈なのに、想いが溢れてきて苦しい。


澪音のそばを離れないと。


私は澪音の邪魔になるから。



そう思っていたのに、溢れた言葉は私の理性とかけ離れていた。


「すき」


澪音の肩が微かに揺れて、一層強い力で抱き寄せられる。

額にあたる澪音の首筋が熱くて、トクトクと脈打つ鼓動を感じた。顎に手がかけられ顔を上げると、澪音は今まで見たどんな時よりも、真剣な眼差しをしている。


「好きだ。もう何処にも行くな」


重ねられた唇の蕩けるような熱に、目眩すら覚える程で。


最後に澪音とキスをしたのはいつだったっけ。

すぐには思い出せないほど前のことなのに、いきなりこんな甘いキスをするなんて不意打ちにも程がある。


足の力が抜けて体が傾いたので、許しを請うように澪音を見上げて唇を離した。


「ちょっと、待って……」


「今まで散々待った後だ。もう待てない」


澪音は私の体を病室のベッドに押し倒して、さらにキスを深くしていった。強引なのに何故か焦らされるような長い長いキス。


「……んっ……ぁっ」


私は深い陶酔感に落ちて、息が乱れるのを隠す余裕も無くなっていた。
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