君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「気持ち良いですね、景色も綺麗だし楽しいっ!」

「喜んでくれて良かった。柚葉は飲み込みが早いよ。体幹が鍛えられてるから、乗り方が上手だ」


澪音は乗馬に慣れた様子で、アーモンド型の大きな目はキラキラとした光に満ちていた。



「もうすぐ景色が開ける」


丘を登ると辺り一面に海岸線が見えた。静かな青い海。その周りを縁取る木々には小さなピンク色の花が咲いていた。


「綺麗……。こんな近くに海があったんですね」


「ここは子供の頃によく見ていた好きな場所なんだ。ずっと柚葉と一緒に見たいと思ってた」


柔らかな声。写真で見た少年の頃の澪音を思い出して、フワフワと幸せな気持ちになる。


その後は海岸線付近の道を通って出発地点に戻り、馬を降りた。馬から離れようとすると、追いかけて甘えてくるのが可愛い。


「柚葉、あの子達に好かれたみたいだね」


「可愛いですね、私も離れるのが寂しいです」


「大丈夫。いつでもまた来れるよ。

別荘もすぐそこだから」


澪音が指す方向に、大きな北欧調の建物が見える。


「別荘?」


「長い間外にいたから、体も冷えたろ。行こう」


びっくりしている間に澪音が私の荷物を持ってくれて、気が付けばその建物に足を踏み入れていた。
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