君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
結局私の方が先にお風呂に入って、温泉をゆっくりと堪能した。浴室にはパジャマが用意されていたけど、まだ夕方なので元のニットワンピを身に付ける。


お風呂から上がると、澪音がキッチンのカウンターで難しい顔をして考え込んでいた。


「どうしたんですか?」


「さっきメイドに、具材を盛り付けて石窯に入れるだけと言われたんだが、数が多すぎて……どうしたものか」


カウンターには、ピザの生地と色とりどりの具材やソースが並んでいる。スモアの用意まであって、見ているだけで美味しそう。

でも澪音は意外とこういったことに不器用で、いっこうに手は進まずに真剣に考え込んでいるようだった。


「ここまで準備して頂いてるならもう簡単ですよ。私がやっておきますから、お風呂どうぞ」


シンプルなマルゲリータやシーフードのピザ、水菜、葱、シラスの和風ピザ、ゴルゴンゾーラチーズと無花果に蜂蜜をかけたデザートピザを焼いて、暖炉前のテーブルに並べる。


バーニャカウダや冷製の前菜まで用意されていたのでテーブルに持っていくと、澪音がお風呂から上がったところだった。


「良い香りがする……。柚葉は料理人のような腕前なんだな」


「いや、どう見てもメイドのさんの準備のおかげですよ」


全く料理をしたことがない澪音は、ピザにトッピングして焼いただけなのに、真剣に驚いていて可愛い。
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