君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
澪音にシャンパンを開けてもらって、二人で乾杯をする。樫月邸での食事よりもずっとカジュアルだけど、とても美味しくて、幸せだった。


食後に暖炉で串に刺したマシュマロを火にかざすと、あっという間に溶けて甘い香りが弾けた。

熱々のうちにビスケットとチョコレートに挟んで食べると、幸せな甘さが口に広がる。クロスカフェでも冬季限定で提供されている、人気メニューのスモア。


「見てるだけで甘そうだな……俺は甘いものはもう十分」


「おいしー!マシュマロの焦げた食感とか、チョコと一緒にトロトロに溶ける感じとか。食べないなんて勿体無いですよ」


「それなら、少しだけ」


澪音は差し出したスモアではなく、私の指に付いたチョコレートを舐める。


「……っ!」


「やっぱり、相当甘いな。口の周りにも付いてるぞ」


啄むように唇を舐められて、びくっとして動けなくなる。気がつけばに口の中まで食べるように舐められ、火にかざしたマシュマロのように溶かされていく。


「ぁ……澪音……、待って、」


「もっと食べたかったか? 意外に食いしん坊だな」


笑う澪音の吐息が耳を掠めて肌が粟立つ。


「もうっ、違います……。急にドキドキさせないで。いつも私ばかり余裕が無くて、恥ずかしいから」


「……何だ、知らないのか。俺に少しも余裕なんか無いのを」


後ろから強く抱き寄せられて、背中に澪音の鼓動を感じた。

「俺だってずっとドキドキさせられているよ。柚葉はつれない態度のくせに、急にそんな顔を見せるから」
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