君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「報酬なら、たくさん音楽を作ってください」


「まだ音楽がいいの? 一曲じゃ満足出来ないのか?」


澪音が吹き出した。笑うと少し幼く見えて可愛い。


「例えばペアで踊るダンスだって、ワルツ以外にもたくさんあるんですよ」


「分かった分かった、踊りの種目ごとの曲があればいいんだな。欲張りな奴め」


「はい!

私、頑張りますから。

澪音の曲のためなら、断固として婚約に反対します」


「お、言ったな。

頼もしいぞ、柚葉」


澪音は笑顔で私の頭をぽんぽんと撫でる。


「それじゃ今度、早速だけどまた家に来てくれ。

書いた曲も聞かせるから」


「あのお家ですか、緊張しますね……」


「大丈夫だよ、普段はもう少し静かな家だから。兄さんにも紹介したいしさ」


そんなのますます緊張してしまう。でも澪音は強引に日程を告げると、すぐに行ってしまった。


お金を返そうとしても「何か好きなものでも買って」と言って受け取らない。


「お嬢様っぽく見えるようなワンピでも買いに行こうかな……」


また勢いで、大変な仕事を引き受けてしまった気がする。


でも、澪音が嫌な人と婚約するくらいなら、私が頑張らないとね。決意と共に大きく伸びをして、クロスカフェを後にした。
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