君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
夕食は茂田さんがサーブしてくれて、澪音は茂田さんにすっかり心を許した様子で話しかけていた。


「父の頭が固くて困ってるんだ。

樫月のしきたりなんて、もう時代遅れなのにさ」


「でしたら、坊っちゃまが当主となられた後に変えていかれたらよろしいでしょう」


「それじゃ遅いんだよ、柚葉のことは。

……って、さすがに『坊っちゃま』はもうよしてくれ」


「失礼いたしました。

私のような老いぼれには、澪音様が小さく可愛らしいお姿だったのがつい昨日のようでして……

もうこんなに素敵な女性を恋人になさるほど、立派に成長なさっているのに」


「いえそんな、私なんか……!」


茂田さんの言葉にびっくりして喉を詰まらせる。リップサービスだと思うけど、まるで孫を慈しむように微笑まれるので嬉しくなった。


「茂田は、柚葉のことについても俺の味方でいてくれるよな?」


「もちろんでございます。御当主様がお認めになるよう、願っております。

……しかし、このままでは旗色がよろしくないのも事実ですな」


「そうなんだ。どうしていいものか突破口が掴めなくて……」


「ここは正攻法で良いのではないですか?

柚葉様にこちらに滞在していただいて、柚葉様をよく知って頂くのです。

そうすれば、立派な女性だと御当主様もお気づきになりましょう」


茂田さんの提案があまりにも突拍子がなくて、


「えぇ!?」


っと思わず声を上げた。でも私の叫びは澪音の


「妙案だな!」


という言葉にかきけされ、そのまま澪音と茂田さんは二人でああだこうだと勝手に盛り上がっている。


「……というわけで柚葉、花嫁修行だ。

ここで暮らしながら、樫月家の嫁に必要なことを学んでくれ。」


「というわけで、と言われても!

何がどういうわけかさっぱりわかりませんけどーー!?」
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