君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
Stage.5 WHAM! Last Christmas1
「ここは落ち着くなー。

あぁ、やっとリラックスできる……!」


バイト先のクロスカフェで、1日ぶりの開放感に浸って延びをする。あのお屋敷を出て、普段の私に戻ったことが何よりも嬉しい。


「有坂さん……?

一応、今、仕事中なんだけどね……」


オーナーに、苦笑いで控えめに注意されてしまった。


「すみません!

ここは私のホームっていうか、そういうイミで。仕事をサボろうってわけじゃなくてっ」


「わかってるって。

今お客さんもそれほどいないから、伸び伸び仕事していいよ」


オーナーはいつもながら優しい。お店の雰囲気といい、落ち着いたオーナーといい、ここにいると和やかな幸せを感じる。


チクチクと痛む心も、働いている間は気が紛れるから。


……



今朝目が覚めたときには、澪音は隣にいなかった。


朝食の時に茂田さんに聞いたところ、日頃の澪音は仕事や勉強に追われて、朝早くから予定が詰まっているらしい。


「同じ家に暮らしても、案外会う時間は少ないんだな……」


と呟くと、茂田さんが柔和に微笑んで、


「お淋しいですか?

でも、今朝の澪音さまは、いつもに増してご機嫌麗しかったですよ」


と言われた。


ふーん、そうですか。さぞかし、良い夢でも見てたんでしょうね!


……と心の中だけで呟く。
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