君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
澪音の教えてくれる通りに指を動かして、メロディーをなぞる。奏でられた音は同じ鍵盤を叩いているとは思えないくらいに頼りなかったけれど、澪音は、
「上手だ。次は合わせるよ」
と演奏を始めた。
クリスマスイルミネーションが似合いそうな幸せなメロディー。すぐ隣に座って演奏を聴くと、澪音の右腕が軽く触れてドキドキした。いつもクロスカフェでずっと遠くから眺めていたから、この距離感は未だに信じられない。
「ほら、ここ」
主旋律が始まる合図を受けて、さっき習ったメロディーを弾く。私の拙い音も、澪音の伴奏に合わせればちゃんと綺麗なクリスマスソングに聞こえてくるから驚きだ。
澪音の右手は時々私の肩を越えて、高いキーを叩く。その音もとても素敵なんだけど、その度に澪音の顔が私のすぐ近くまで寄せられるのが気になって、簡単なメロディーすら上手く弾けなくなってしまう。
そんな私をガイドするように、澪音は歌詞をそっと口ずさんだ。
この歌の歌詞は、実はかなり恨みのこもった失恋ソングだ。可愛いメロディーなのに、不実な恋人を詰る詞が乗せられている。
澪音は不思議だ。いつもは強気で強引なくせに、今は私をまるで壊れ物のように扱う。
「いい感じだったよ。たまには弾くのもいいだろ」
「はい、とっても。
澪音と一緒に弾くと私の音でもちゃんとして聞こえて、魔法みたいですね。それに、澪音の歌が聞けて良かったです。柔らかくてきれいな声」
澪音は少し照れて誤魔化すように付け加えた。
「こんな不景気な歌詞の曲が、クリスマスシーズンになると街中で聞こえてくるなんて、日本は変わった国だよな」
「上手だ。次は合わせるよ」
と演奏を始めた。
クリスマスイルミネーションが似合いそうな幸せなメロディー。すぐ隣に座って演奏を聴くと、澪音の右腕が軽く触れてドキドキした。いつもクロスカフェでずっと遠くから眺めていたから、この距離感は未だに信じられない。
「ほら、ここ」
主旋律が始まる合図を受けて、さっき習ったメロディーを弾く。私の拙い音も、澪音の伴奏に合わせればちゃんと綺麗なクリスマスソングに聞こえてくるから驚きだ。
澪音の右手は時々私の肩を越えて、高いキーを叩く。その音もとても素敵なんだけど、その度に澪音の顔が私のすぐ近くまで寄せられるのが気になって、簡単なメロディーすら上手く弾けなくなってしまう。
そんな私をガイドするように、澪音は歌詞をそっと口ずさんだ。
この歌の歌詞は、実はかなり恨みのこもった失恋ソングだ。可愛いメロディーなのに、不実な恋人を詰る詞が乗せられている。
澪音は不思議だ。いつもは強気で強引なくせに、今は私をまるで壊れ物のように扱う。
「いい感じだったよ。たまには弾くのもいいだろ」
「はい、とっても。
澪音と一緒に弾くと私の音でもちゃんとして聞こえて、魔法みたいですね。それに、澪音の歌が聞けて良かったです。柔らかくてきれいな声」
澪音は少し照れて誤魔化すように付け加えた。
「こんな不景気な歌詞の曲が、クリスマスシーズンになると街中で聞こえてくるなんて、日本は変わった国だよな」